熊本県テコンドー協会

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回想 〜くまもとのテコンドー〜

  • 熊本県テコンドー協会
  • 会長 樋口 悦夫

身長2メートルの恐怖

韓美道場に通い出した私は、テコンドーの技を、フィリップリーから教えてもらいましたが、手技、足技の基本は、ほぼ空手と同じ様に思えました。しかしテコンドー独自の蹴り技、かかと落とし(ネリョチャギ)や捻り蹴り(ピットルチャギ)など空手にはほとんど見られない技もあり、スパーリングでは、回し蹴り(トルリョチャギ)は勿論のこと、横蹴り(ヨップチャギ)、後ろ蹴り(テゥッチャギ)、うしろ回し蹴り(テゥッフリギ)等、多彩な蹴り技での攻防が多く見られ、私が小学生の時に観たテレビの「韓国空手・テコンドー」を再び思い出させました。

しばらく通う中に、スパーリング(キョルギ)をやらないかと言われ、中国人でテコンドーの他に沖縄空手の黒帯でもある20歳ぐらいの道場生と対戦することに、しかし、まだ、英語も良く理解出来ない私は、極真空手のスタイルでロ―キック(下段回し蹴り)、膝蹴り、そして接近戦からの投げなどで、相手を圧倒していたつもりでしたが、それらの技はすべて反則行為とも知らずに誇らしげな態度をとっていた自分がとても恥かしく思えました。テコンドーは、顔面への突き、膝蹴りなどの危険な技を除外したため、腰から上の蹴り技が発展してきた武道、何がなんでも相手を倒し勝つことだけを、念頭にやってきた私には、いささか拍子抜けした感じでしたが、次に対戦した相手は、身長は2メートル近く、体重は80キロを有に超えている大柄の黒人、当時の私の身長が175センチ、体重は53キロと、どちらかと言えば細身の体、立った瞬間は、さすがに怖さを感じました。軽く蹴ってきた蹴りでしたが、私の頭の上を数回、空を切り、中段を狙った突きも、危うく顔面にヒットする程のリーチの長さ、今までに経験したことがない異様なまでのスパーリングでした。なんとか接近戦に持ち込み、突き蹴りともに繰り出しますが、懐が深いうえに、テコンドー特有のフットワークで上手く交わされ中々ヒットしません。しかたなく、また、足を掛けて倒してしまいました。結局、ダメージのある突きや蹴りは当たらなかったものの、体格差、そして重量級ながらスピードのある蹴り技に驚きと恐怖を感じさせられた貴重な経験でした。

その後、テコンドーのルールやテコンドー独自のステップを習いながら、空手とテコンドーの違いを少しずつ体得して行き、短い数カ月間でしたが、実際にテコンドーを学んだ貴重な経験となり、また、インストラクターのフィリップリー、サイモンリーの兄弟や道場生の皆さんに、親切に友好的に接していただき、帰国する際には、フィリップリーおススメの韓国系のお寿司屋さんで食事を御馳走になったことは、今でもいい思い出なっています。

1998年、ロスアンジェルスを訪れた際、20年ぶりに、フィリップリーと再会できたことは、一生の良き思い出となりました。

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